ときのほとり

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秋のひと日

読みかけの本を開いて日常を束の間閉じる紅茶をいれて

虹いろの夢を求めしあの頃を語れる友の歩はばにあはす

ゆっくりと愚痴をこぼして友が又今日も眼鏡を忘れて帰る

やわらかき土に眠れるどんぐりのひとつを踏めば遠き日の音

人気なき家の軒下風鈴がひとつ残りて秋風に響る

どちらまでお連れしましょう楓の葉がフロントガラスに貼りついている
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# by fumi2718 | 2013-10-07 11:20

好日

なすべき事山程あるを思いつつドカッと腰据えキーボード打つ

また忽然と机の上より失せし物探し探して時を失ふ

うたた寝の夫の顏まで陽ざし伸び音たてぬ様カーテンを引く

朝顔の花数輪を咲かしめて秋も半ばの空の水色

されば世に声鳴くものとさらぬものありてぞ草のほととぎす咲く
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# by fumi2718 | 2013-10-02 10:00

秋の実

梢には風くる気配
さわさわと
青き銀杏のつぶら実揺れる

紫に熟れしあけびはやはやはと
甘き果肉に
種子(たね)を包める

耀へるぐみのうら葉の
さゆらぎを
車窓に見しは何処なりしや
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# by fumi2718 | 2013-09-25 16:31

子規忌(糸瓜忌・獺祭忌)

生涯に娶るなかりし子規、賢治ともに献身の妹ありき

旅立ちの子規像若し草鞋ひも結ぶ腕に風光りをり

余白の美歌いし子規の藤の花たたみに触れぬ心静かに

子規庵の六畳の間に置かれたる文机深き切込みのあり

子規の碑の前に佇み見上ぐれば古木の風格見せてさくらは

子規の書く絶句三つの墨のあとたましい凝らす力に掠(かす)る

(絶句3) 正岡子規
糸瓜咲て痰のつまりし佛かな

痰一斗糸瓜の水も間に合はず

をとゝひのへちまの水も取らざりき


「瓶にさす」歌の心をもやもやと思いてゐたり子規祀るけふ

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# by fumi2718 | 2013-09-19 20:00

狐の嫁入り

花は葉を葉は花を見ぬ彼岸花季節たがえず土手に華やぐ

目をやれば野にありてこそ彼岸花稲刈りし田を朱に染めて咲く

黄金色に染まる大地を裂くごとくまぶしく走る曼珠沙花かな

曼珠紗華の炎(ほむら)だつ道結界に至れば吾をよぎりゆく影

日照雨(そばえ)降る薄の土手に出て見れば狐の嫁入り来る気配なり

田の面の片端ぬらし長月の狐の嫁入りまぶしくよぎる

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# by fumi2718 | 2013-09-15 21:18

秋めきて

葉の裏に夢の抜け殻を置き去りしつくつく法師の声も絶えたり

留守電にこおろぎの声入れてやる娘に短き用告げしあと

肥後守使いし頃のわたくしはしっかり書きしよ確かな文字を

われの詠む歌とは何ぞつき詰めてゆけばゆくほど解らなくなる

残りたる日はまだ長しされどまた歩み来し日もいたずらに長し

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# by fumi2718 | 2013-09-10 09:42

小染月

湧水の流れの中に逆らわず花白々と立てる梅花藻

見ゆるものなべて和らげ降る雨はゆるりと秋をもたらすらしも

忘れ物取りに戻りてその在処その忘れ物思い起こせず

見覚えのあれど名前の想い出せぬ顏がだんだん近づいてくる

しみじみと思う歌あり人ありて小染月いかなる色に染むべし

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# by fumi2718 | 2013-09-06 17:12

季秋

昔日の人らの祈りの道祖神笑みたる女男(めお)の神は寄り添ふ

万葉の人らのたつき偲びつつ萩の花咲く下道をゆく

萩ゆれて白玉のつゆこぼれたりはっとしみいる今朝の秋なり

ひと夏を華やぎ今はただひとつ咲きゐし木槿の花も終わりぬ

ひとつふたつ上向きに着く実もありて小さき柚子は秋風を受く

柔らかき草より枯れる野の秩序わがものとして夏は終わりぬ

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# by fumi2718 | 2013-09-01 21:16

うたう快楽

何あるも不思議なき世に紫の朝顔二輪咲ける靜寂(しじま)を

みずひき草あるかなきかの紅ひけり吾(あ)を吹きぬけし風の傷あと

みぎひだり天地一尋の世を生きて今年の虫のこゑにたたずむ

いくたびも手をさしのばす過ぎゆけることばの風をつかまむとして

もの言ふなものを言ふな短歌とふおとなきリズムのくにへ入りゆく

天を詠み地詠み人詠み風を詠み詠み詠みて尽くるか我の一世は

うたは良し聴くうたも良し奏でるも詠むうたも良し心伝えて

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# by fumi2718 | 2013-08-26 15:26

艶めくは月夜の庭をよぎりゆく黒猫の背に乗れる月影

月の夜そばで一献さしあげて話したかりし南方熊楠(みなかたくまぐす)

影踏みとう 遊びのありしこと思う 月の光の明るき夜は

朝明けの青き深空にオレンジを抛り投げたるごとき月照る

世捨人時にあこがれ耿々と月の一片たづさえてゆく

風止んで月夜の晩に猫が行くオオカミ男のごとき影ひき

すこしづつ夜が逃げゆく明け方を窓を開けば淡き朝月

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# by fumi2718 | 2013-08-17 21:11